開業の手続き

介護タクシーは個人で開業できる — 「個人向けの手引きがない」運輸局サイトの迷宮と正しい入口

先に結論を書きます。介護タクシーは、法人を作らなくても、個人事業主のまま開業できます。私自身、個人事業主として許可を取得し、現在も関東で介護タクシーを営んでいる現役事業者です。

それなのに、運輸局のサイトをどれだけ探しても「個人で介護タクシーを開業する方法」という通しの手引きは見つかりません。私も開業を決意した直後、ここで最初につまずきました。この記事では、なぜ見つからないのかという構造の種明かしと、では何を読めばいいのかを整理し、最後に**開業までの全ステップの目次(ロードマップ)**を置きます。この連載自体が「個人向けの手引き」になるように設計しています。

結論サマリー

疑問答え
個人事業主で開業できる?できる(許可申請の手引きに「個人にあっては」の添付書類が明記されている)
個人向けの通しの手引きはある?ない(少なくとも関東運輸局のサイトに、個人事業主向けの通しの入口は用意されていない)
では何を読む?「法人タクシー」側にある福祉輸送(介護タクシー)関連の手引き
「個人タクシー」のページは?別制度(1人1車制個人タクシー)。介護タクシーの個人開業とは関係がない

開業を決意した日、手引きが見つからない

開業を決めて最初にやることは、たいてい「公式の手引きを探す」ことだと思います。私もそうでした。ところが、検索しても運輸局のサイトを巡っても、「個人で介護タクシーをやる流れ」を示した書類にはたどり着けませんでした。

あるのは法人タクシー向けの資料ばかり。このとき頭に浮かぶのは、おそらく多くの人が同じだと思います——「介護タクシーって、法人を設立しないとダメなのか?

結論から言えば、これは誤解です。ただし、誤解する側が悪いのではなく、誤解を招く構造になっています。

なぜ見つからないのか — 運輸局サイトの分類の種明かし

関東運輸局の「タクシー事業を始めるには」のページを開くと、情報は大きく「法人タクシー」「個人タクシー」(と両者共通)に分類されています。そして介護タクシー(福祉輸送)の手引きや資料は、法人タクシー側の中に置かれています。個人タクシー側にはありません。

ここで知っておくべきことが2つあります。

ここがポイント: 「法人タクシー」は”法人限定”という意味ではない

関東運輸局の審査基準の公示では、法人タクシー事業は「一般乗用旅客自動車運送事業のうち、個人タクシー事業でないもの」と定義されています。つまりこの分類は事業形態の分類であって、法人格の要件ではありません。「法人タクシー」と呼ばれる枠の中に、個人事業主の介護タクシーも含まれているのです。

実際、その枠の許可申請の手引きには「個人にあっては」提出する書類(資産目録・戸籍抄本・履歴書)が明記されています。個人で申請することが、制度上はじめから想定されているということです。

しかもこの手引き自体が、福祉輸送に限定して、5両未満で行う場合の許可申請書の記載要領として作られたものです(手引き冒頭に明記)。車1台からの小規模開業を考えている人にとって、これがまさに「自分向けの公式資料」です。

ここがポイント: 「個人タクシー」は別制度

もう一方の「個人タクシー」は、1人1車制の個人タクシー事業という別の制度です。手引きの正式名称も「一般乗用旅客自動車運送事業(1人1車制個人タクシー事業を除く。)経営許可申請書作成の手引き(福祉輸送限定用)」となっており、ここからも両者が区別されていることが分かります。介護タクシーを個人で開業したい人が「個人タクシー」のページを読んでも、求める情報がないのは当然なのです。

整理すると、介護タクシーの許可は「一般乗用旅客自動車運送事業(福祉輸送事業限定)」で、個人事業主でも取得できます。読むべき資料は、サイト上では「法人タクシー」と書かれた棚にあります。

運輸局に電話して確かめた — 「個人でもできる」

とはいえ、当時の私はこの構造を知りません。ネットやYouTubeで、個人事業主として介護タクシーを営んでいる人が実在することを知り、「できるはずだ」と考えて、運輸局に電話で確認しました。

回答は明確で、「個人でもできます」。

ただし印象的だったのは、そのときの案内も「法人タクシー側のこの資料を見てください」という形だったことです。個人向けの入口やまとめ資料が案内されることは、最後までありませんでした。個人でも開業できるのに、個人向けの通しの導線は用意されていない——これがこの制度の現在地です。

公式の手引きがないなら、この連載が手引きになる

そこで本サイトでは、私自身の開業経験を時系列に分解し、個人事業主の介護タクシー開業ロードマップとして連載します。以下が目次です。公開済みの記事はリンクから読めます(順次公開していきます)。

介護タクシー個人開業ロードマップ

  1. 開業資金を準備する介護タクシー開業資金は本当に300万円必要? — 実額207万円で許可された計算式の全部
  2. 二種免許を取る介護タクシーの二種免許、一発試験なら約4万円で取れる — 教習所との差額20万円以上の実体験
  3. 営業所・車庫・車両を決め、申請書類を揃える — 総論: 介護タクシー許可申請の必要書類はほぼ全部が初見だった — 全添付書類の地図と「作り込む塩梅」の正解/各論: 用途地域の壁/幅員証明書と公図/宣誓書(準備中)/運輸局への電話のかけ方
  4. 申請から許可まで — 許可までの期間と訂正対応(準備中)
  5. 法令試験はあるのか — ネット情報と実際の違い(準備中)
  6. 許可証の交付と緑ナンバー取得 — 交付日当日の流れ(準備中)/事業用ナンバーへの変更(準備中)
  7. 運輸開始届を出す — 開業前最後の手続き(準備中)
  8. 開業後の法定帳簿を整える — 運送事業者に義務付けられる記録類(準備中)

まとめ

  • 介護タクシーは個人事業主のまま開業できる。法人設立は必須ではない
  • 運輸局サイトの「法人タクシー/個人タクシー」は事業形態の分類であり、法人格の有無の分類ではない
  • 介護タクシーの手引き・資料は**「法人タクシー」側の福祉輸送関連の項目**から探す
  • 「個人タクシー(1人1車制)」は別制度。そちらに情報がないのは当然
  • 迷ったら管轄の運輸支局・運輸局に電話で確認する。「個人でもできる」と答えてもらえる(電話のコツは運輸局への電話のかけ方で解説しています)

注意書き

  • 本記事は筆者個人の開業経験(関東運輸局管内)にもとづくものです。サイト構成・手引きの名称・手続きの運用は地域や時期により異なる可能性があります。最新情報は必ず管轄の運輸局・運輸支局の公式サイトでご確認ください
  • 一次情報の参照リンクと確認日(いずれも2026年6月11日確認):

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