開業の手続き

介護タクシーの申請後に車両が変わったら — 補正ではなく「追加申請」という別の手続き

開業申請の書類を出して、あとは許可を待つだけ——そう思っていた矢先のことでした。購入する予定だった車両が、売れてしまったのです。

申請書には、その車両を前提に資金計画まで書き込んでいます。私は青くなりました。「車両が変わるなら、申請はまた一からやり直しなのか?」と。

先に結論を言います。やり直しではありませんでした。 申請後に計画が変わったときには、「追加申請」という別の手続きが用意されています。運輸局に相談すれば、ちゃんと正規の道に乗せてもらえる。だから、もしあなたが同じ状況になっても、慌てる必要はありません。

書いているのは、関東で介護タクシーを営む現役の個人事業主です。この記事では、申請後に車両が変わった私が、実際にどう「追加申請」をしたのかをお伝えします。そして最後に、ひとつ意外な発見——車両の値段が40万円以上も上がったのに、資金計画の総額はほとんど変わらなかった話をします。

「補正」と「追加申請」は、別の手続き

まず、言葉を整理させてください。私はこのとき、運輸局とのやり取りで2種類の手続きを同時に経験しました。補正追加申請です。名前は似ていますが、中身はまったく違います。

  • 補正は、提出した書類に不備があったときに、その書類を直す手続きです。記載のつじつまが合っていない、添付が足りない——そういう「すでに出したものの訂正」です(補正で実際に何を直したかは補正の記事に詳しく書きました)。
  • 追加申請は、計画そのものが変わったときに、変わった内容で出し直す手続きです。私の場合は、申請の前提だった車両が別の車両に変わった。これは書類の書き間違いではなく、計画の中身が動いた話なので、補正ではなく追加申請になります。

私の場合、たまたまこの2つが同じ電話の機会に持ち上がりました。申請から2週間以上たった頃、運輸局から補正の連絡が電話で来たのですが、その同じ通話の中で、私は「実は車両が変わってしまって」と相談したのです。すると担当者は、補正の話とは分けて、「それは追加申請という手続きになります」と教えてくれました。

つまり、同じ一本の電話で起きたことでも、手続きとしては二階建てだったわけです。出した書類の訂正(補正)と、変わった計画の出し直し(追加申請)。ここを混同すると、自分が今どの手続きをしているのか分からなくなります。最初に切り分けておくのが大事でした。

追加申請の流れ — ここでも運輸局が「型」をくれた

では、追加申請は具体的にどう進んだのか。流れはとてもシンプルでした。

  1. 補正連絡の電話で、車両が変わったことを相談した
  2. 運輸局から「追加申請になる」と案内された
  3. 運輸局が、追加申請に必要な書類を記した様式を郵送してくれた(「一般乗用旅客自動車運送事業経営許可追加申請書」という書面でした)
  4. 届いた様式を見ながら、私が追加申請書を作成した

ここで強調したいのは、補正のときと同じ安心感が、追加申請でもあったことです。運輸局は「追加申請してください」と突き放すのではなく、何を出せばいいのかを書いた様式そのものを送ってくれました。 様式が届いたのは、たしか7月の終わり頃。それを見れば、何をどう書けばいいのかが分かる。手探りで一から考える必要はありませんでした。

「申請後に計画が変わる」というのは、役所からすれば珍しいことではないのでしょう。だからこそ、ちゃんと手続きの型が用意されている。想定外の事態に見えても、行政の側には対応する道筋がある——このことは、開業準備で不安になっている人にこそ知っておいてほしいと思います。

なお、この追加申請の書類は、先の補正で直した書類とあわせて提出しました。そして申請から許可までは、全体で2ヶ月ほど。途中で車両変更という想定外をはさみながらも、許可は無事に下りました。

山場 — 車両は40万以上上がったのに、総額はほぼ同じだった

追加申請でいちばん手を入れたのが、資金計画です。車両が変わったということは、その値段も変わります。だから、申請のときに出した資金計画の書類(様式例3-1)を、新しい車両の価格で作り直す必要がありました。

ここで、自分でも意外な結果になりました。数字で見てみます。

  • 車両本体の価格:約92万円 → 約135万円(車両が変わって、40万円以上も上がった)
  • 資金計画の総額:約205.8万円 → 約207万円(ほとんど変わっていない)

おかしいと思いませんか。車両という一番大きな費目が40万円以上も上がったのに、計画全体の合計はほぼ横ばい。最初に作り直したとき、私は何かを間違えたのかと、何度も見直しました。

種明かしはこうです。当初の資金計画には、料金メーター代として約40万円を計上していました。 ところが、私の場合はこの料金メーターが不要という整理になり、その約40万円を資金計画から落とすことになったのです。つまり——

車両で増えた分(約43万円)を、メーター代の削除(約40万円)がほとんど打ち消した。 だから総額は、ほとんど動かなかった。そういうカラクリでした。

(料金メーターについては、当初は付ける前提で費用を見ていたものの、私の申請ではメーターを使わない整理になり、資金計画から外したという経緯です。資金計画の費目の組み立て方そのものは開業資金の記事で詳しく書いています。)

この経験から学んだのは、資金計画は「車両の値段=開業資金」という単純な足し算ではない、ということです。一つの費目が動けば、別の費目との兼ね合いで、全体の数字は思わぬ動き方をします。車両が変わって総額が上がると身構えていた私にとって、これは拍子抜けすると同時に、計画というものの見え方が変わる出来事でした。

まとめ — 計画が変わっても、やり直しではない

最後に、この記事で伝えたかったことをまとめます。

  • 申請後に車両(計画)が変わっても、一からやり直しではない。「追加申請」という正規の手続きがある
  • 補正と追加申請は別物。補正=出した書類の訂正、追加申請=変わった計画の出し直し。同じ機会に起きても、手続きとしては分けて考える
  • 追加申請でも、運輸局は必要書類を記した様式を送ってくれた。型を渡してくれるので、手探りにはならない
  • 車両が変わると資金計画(様式例3-1)を作り直す。私の場合、車両は約92万→約135万に上がったが、当初計上のメーター代約40万を落としたため、総額は約205.8万→約207万でほぼ横ばいだった

開業準備の途中で、予定していたものが手に入らなくなる。車両に限らず、そういうことは起こります。でも、そのたびに「もう全部だめだ」と思う必要はありません。変わったら、変わったと運輸局に相談する。 たいていの想定外には、対応する手続きが用意されています。慌てず、まず一本の電話から——それが、私がこの経験から伝えたいことです。

注意書き

  • 本記事は筆者個人の開業経験(関東運輸局管内・個人事業主)にもとづくものです。手続きの名称・必要書類・所要期間、料金メーターの要否は、申請内容や時期、地域の運用により異なります。自分の申請については、必ず管轄の運輸支局・運輸局の指示に従ってください
  • 記載した金額は筆者の申請当時の概算であり、車両価格・費目の扱いは時期や条件により変わります。資金計画の要件は現行の手引きと運輸局の確認を正としてください