帳簿と記録の義務
介護タクシーの帳簿、あなたはいくつ揃っていますか — 10問で数えてみる
点呼の記録、日常点検の記録、運行の記録。適性診断。教育の記録。事故が起きたときの記録。そして、年に一度の報告。この連載で、私はそれらを一つずつ書いてきました。
書きながら、だんだん分かってきたことがあります。これらの義務は、バラバラに散らばっているのではなく、どこかで繋がっているということです。日々の記録が、年次の報告の材料になる。一つを整えることが、別の一つの支えになる。
では、その全体を見渡したとき、自分はいったい、いくつ揃えられているのでしょうか。
書いているのは、関東で介護タクシーを営む現役の個人事業主です。
「たぶん大丈夫」は、数えられない
正直なところ、私も長いあいだ、頭の中で「たぶん、やれているはず」と思っていました。
でも、この「たぶん」というのが、いちばん危ういのです。監査で問われるのは、出せるか出せないか、揃っているか揃っていないか、そのどちらかだけです。「たぶんやっている」という感覚は、そこでは数えられません。
以前、新規開業者こそ監査の入口に立っている、という話を書きました。怖がらせたいのではありません。ただ、頭の中にある「やれているはず」を、一度、外に出して数えてみないと、自分が本当はどこにいるのかは分からない。棚卸しというのは、そういう作業なのだと思います。
私が、どう記録しているか
ここで、私自身のことを正直に書いておきます。
事業を始めて二か月目のことでした。私は、翌月分の記録用紙を印刷し忘れて、数日そのまま過ぎてしまったことがあります。幸い、走るたびに付箋にメモを残していたので、記録そのものが抜けることはありませんでした。ただ、あとからまとめて用紙に書き写すのが、とにかく面倒でした。点呼も点検も運行日誌も、まとめて印刷していたので、どれか一つだけ忘れるということはありません。忘れるときは、いつも全部が一緒でした。
そのとき、ふと前のことを思い出しました。前職でも、私は車に乗るたびに、記録をシステムに入力していました。毎回、紙を印刷して、レ点を入れて、名前を書く——今やっているこのルーチンワークは、あのとき入力で済ませていたことなのだと。入力する仕組みさえ作れば、私はこの作業から解放されるはずだ。そう気づいたのです。
そこから私は、自分用の入力システムを作りました。いまは紙を使わず、記録はすべてそこで回しています。運行の記録は、その場でメーターと時間を見ながら打てる。料金も入れられるので、今月いくら売り上げたかも、すぐに見えます。
そして今、この経験を、同じ悩みを持つ事業者にも使える形に作り直しています。それが、このサイトの名前にもなっている「ケアタクログ」というアプリです。まだ、作っている途中です。だから、ここでその中身を語るつもりはありません。ただ、私が紙で味わったあの面倒を、誰かがもう一度なぞらずに済むなら、と思って手を動かしている、とだけ書いておきます。
まず、数えてみてください
そこで、この連載の最後に、一つだけ用意しました。自分の記録が、今いくつ揃っているかを確かめる、10問のセルフチェックです。
一問ずつ、「できている」「できていない」「わからない」の三つから選ぶだけです。数分で終わります。そして、回答した内容は、どこにも送信されません。あなたの端末の中だけで完結します。
一つ、先にお伝えしておきたいことがあります。「わからない」という答えを、ためらわないでください。むしろ「わからない」は、記録がないことよりも見つけにくい穴です。監査の場で問われたとき、「わからない」ままでは、揃っているとは言えないだろうと私は思っています。だからこそ、今それが「わからない」だと分かること自体に、意味があります。
これで監査が安心になる、というようなものではありません。ただ、自分の現在地を数字で見る。それだけのために作りました。
足りなければ、今日から
数えてみて、もし足りないところがあっても、落ち込む必要はありません。
私自身、始めた頃は、ほとんど何も揃っていませんでした。開業のとき、帳簿のことを教えてくれる人は、誰もいなかったからです。足りないのが普通で、そこから一つずつ積んでいくものなのだと、今は思っています。
この連載でずっと書いてきたことを、最後にもう一度だけ。帳簿は、罰を避けるためにつけるのではありません。いざというときに、自分を守ってくれる保険です。だから、数えて、足りないものが見つかったら、そこから始めればいい。今日からで、間に合います。
※このセルフチェックと連載は、私自身の体験と、公表されている法令・監査方針をもとにしたものです。法的助言ではありません。正確な義務の内容は、管轄の運輸支局や国土交通省の公式情報で必ずご確認ください。