帳簿と記録の義務

介護タクシーの適性診断、『個人だから関係ない』と言われた — 自分で確認したら、必要だった

帳簿について調べていくうちに、私は「適性診断」という言葉に行き当たりました。運転者が受ける、決められた診断のようです。ただ、正直なところ、最初は自分に関係があるとは思っていませんでした。

というのも、許可をもらったときに、私はこの件を一度、窓口で確認していたからです。

書いているのは、関東で介護タクシーを営む現役の個人事業主です。

「個人だから、関係ないですね」

許可交付のときにもらった説明書類の中に、手続きの流れをまとめた図がありました。その中に、適性診断の受診、という項目があった。ただ、それは法人向けの欄に書かれているように見えました。

気になって、私は窓口の職員に尋ねました。「ここは、自分には関係ないのでしょうか」と。

返ってきた答えは、こうでした。「今回、あなたは個人での介護タクシーなので、関係ないですね」。

そのときは、そうなのか、と思いました。専門の窓口の人がそう言うのだから、そうなのだろう、と。

調べるほど、理屈が合わない

ところが、自分で帳簿を調べていくうちに、どうも引っかかってきました。

確かに、個人タクシーの人は受けなくてよい、と書かれているものがありました。でも、よく読むと、それは長く法人のタクシーで運転してきた経験があるから、そのぶんが認められている、という話のようでした。

私は、違います。新規で始めたばかりで、タクシーの仕事をしてきた経験もない。だとしたら、「経験があるから免除される」という理屈は、私には当てはまらない。受けなくていい、という結論には、どうしてもならないのです。

とはいえ、細かいところまでは、調べきれませんでした。介護タクシーの個人事業主が、どう扱われるのか。ここは、自分で読んでいるだけでは、確信が持てない。それなら、直接聞くしかない。私は、運輸局に電話をかけました。

電話で、ひっくり返った

電話口で、私は正直に伝えました。許可交付のときには必要ないと説明されたけれど、自分で調べると必要なのではないかと思えてきた。これは、本当に必要ないのでしょうか、と。

担当の方の答えは、はっきりしていました。「必要です」。交付のときに違う説明があったようですね、と少し驚いた様子で、それでも、必要なことなので受診してください、と念を押されました。

交付時の説明は、間違っていたのです。

このとき私は、責める気持ちよりも、ぞっとする気持ちのほうが大きかった。もし私が引っかからずにいたら。窓口で言われたことを、そのまま信じ続けていたら。私は、受けるべきものを受けないまま、ずっと業務を続けていたことになります。

そして学んだことがあります。窓口の担当者でも、判断が分かれることはある。制度は複雑で、細かいところは、聞いてみないと分からない。大事なことは、一つの説明を鵜呑みにせず、自分で確かめるしかないのだ、と。

気づけたことが、幸いだった

怖いのは、これが、普通ではまず気づけない類のものだ、ということです。

毎日つける記録なら、つけ忘れても「今日は忘れた」と分かります。でも適性診断は、そもそも受ける必要があると知らなければ、受けそびれていることにすら気づけない。存在を知らないまま、違反の状態が、静かに続いていく。

試しに、知り合いの介護タクシーの事業所に聞いてみたことがあります。返ってきたのは、「何それ、そんな説明は受けていない」という言葉でした。やはり、知らない人がいる。私だけの話ではなかったのです。

この違反が、処分としてどれくらい重いのか、正確なところは私にも分かりません。ただ、気づかないまま走り続ければ、いつか監査で指摘されることになる。それだけは確かです。

だからこそ、気づけたことは、幸いだったと思っています。面倒だとか、そういう話の前に、まず「存在を知る」こと。それができただけでも、大きかった。次は、日々の記録とはまた違う、運転者への教育の記録について書いていきます。

※この記事は私自身の体験と、自分で確認した内容を記したものです。適性診断の要否や対象は個々の事情により異なります。正確な内容は、管轄の運輸支局や国土交通省の公式情報で必ずご確認ください。